「ボーダー」、「アダムズ・アップル」、「ドリーミング村上春樹」をみてきました。
それぞれ興味の尽きない映画で、どれも観賞お勧め作品です。
「ボーダー」
2019年9月11日。大台風が関東を直撃した前日(封切り日)にみました。ファンタジーと現実のボーダーを取り払って、北欧文化が生み出す独特の異界を描きつつ、狼藉を重ねる人間社会を糾弾しています。トロルが主人公なのですが、その存在の捉え方が新鮮。
本作で初めて北欧映画を観る人にはおそらく鮮烈な印象を残す映画です。その人達は「北欧」という言葉を聞くと、たぶんしばらくフラッシュバックするように「ボーダー」のヒロインを思い出すでしょう。
「アダムズ・アップル」
俊才アナス・トマス・イェンセン監督が仕掛ける、教会の犯罪者更正施設を舞台にした大爆笑コメディでした。イェンセン監督のギャグに初めて接する方は、やや戸惑うかもしれません。
日本には、ゆるいギャグを連発して暴走気味に作品をつくる三木聡さんという映画監督(作品は「亀は意外に速く泳ぐ」など)がいます。
本作では、三木監督とは真逆の、イェンセン監督のどつき漫才的ギャグが、最初から最後まで手を抜くことなく炸裂します。
予想不能の展開でどうなるかと思いきや、逆転アッパーカットのようなギャグを炸裂させてハッピーエンドにもっていくのはさすが。イェンセン監督に慣れておくために「ゼイ・イート・ドッグス」「ゲット・ザ・マネー」を前観賞しておくと良いです。両作品には少し頭のネジが緩んだ、移民とギャングが登場しますが「アダムズ・アップル」でも健在です。
「ドリーミング村上春樹」。
一言でいえば、本作監督のニテーシュ・アンジャーンさんの村上文学へのオマージュ作品です。
彼は村上春樹さんの大ファンで、その気持ちをなにかで表したいと考えているうちに、翻訳家メッテ・ホルムさんと出会ったのでしょう。
メッテさんは村上作品のデンマーク語翻訳者です。村上作品の一文をデンマーク語化するめに、適訳を求めてさまよう翻訳家、メッテ・ホルムさんの探求心が素晴らしい。
どこかでみたような映画だなぁ、と思ってみていたら、『ロスト・イン・トランスレーション』(Lost in Translation)は(03年の米日合作映画。ソフィア・コッポラ監督)によく似た作りです。
小一時間のドキュメンタリー映画ですが、思いがけない仕掛けもあり、興味深く、ほんとうに面白い映画でした。私は村上作品は2つしか読んでいません。映像にでる風景は村上ファンならみんなわかって、より本作を楽しめるのでしょうね。