山川亜古
「フィンランド語は難しい」という伝説!?
確かに北欧語の中でもフィンランド語だけ全然違うし、発音も文法構造も語彙も、英語やドイツ語など身近に知っている言語のタイプとはかなり異なっていて、 馴染みがなく感じられます。でもそう恐れることはありません。私達日本人にとっては実は意外にとっつきやすい言葉でもあるのです。
発音は日本人向けの言葉?
外国語学習ではたいてい発音の習得に苦労します。ところがフィンランド語に関しては、まずその苦労が殆どありません。 フィンランド語は文字をそのまま書いてあるとおりに、ローマ字を読むように発音すればいいのです。例えば、puu は「プー(木)」、talo は「タロ(家)」、 me は「メ(私たち)」といった具合です。アクセントも常に単語の頭(第一音節)につけ、イントネーションも平易、疑問文は終わりを下げて読みます。 そんなわけでフィンランド語を習いたての人でもすぐに通じますから、声に出して使ってみるのがとても楽しくなること請け合いです。
また発音が日本語そっくりの単語がたくさん出てくるので (例えば 上述のme メ(私たち)→目 he ヘ(彼ら、彼女ら)→屁 hanaハナ(蛇口)→花、鼻、 susiスシ(狼)→寿司 などなど)、 ちょっとしたことば遊び的な要素も楽しく学習を進める助けになるかも。
文法規則はパズル感覚で覚えてみよう!
フィンランド語が難しい、といわれる所以はその文法規則にあります。 名詞や動詞の活用がたくさんあるからです。フィンランド語は語末を変化(活用)させ後ろに文法的な情報がくるタイプの言語ですが、 名詞の活用形は日本語の「てにをは」格助詞の使い方に似ているのでわかり易いでしょう。例えばkoulu「学校」という名詞は、 koulu-n学校-の koulu-a学校-を koulu-un学校-に koulu-sta学校-から koulu-ssa学校-で となります。
ところで単語は文中では、原形(辞書形)から活用した形で登場することが殆どです。そのため学習を進めていく上で、まず単語が原形からどう活用するのか その基本的な語尾変化をどうしても覚える必要があります。そうしないと辞書が引けないという困った事態が待っています。 もとの原形がわからないために辞書が引けず何十分も費やす・・・なんてことが学習初期の段階ではよくあります(私もありました!)。 というわけで基本の語尾変化や活用の形をぜひ何度も声に出して暗記するように覚えてください。
フィンランド語はシステマチックな言語です。最初は文法の規則性など覚えることが多くてとんでもなくやっかいに感じますが、 パズルを解いた後の達成感を楽しむような気持ちで学習を進めてみてください。一から全く新しいタイプの言葉を学ぶ醍醐味、 これがこうなるの?という新鮮な驚きがフィンランド語への興味を更にかきたてることでしょう。
【山川亜古】
東海大学大学院卒。
フィンランド語講師、サーミ言語研究家。
1996年フィンランド政府奨学生としてヘルシンキ大学人文学部留学。
1998年オウル大学、2000年8月より1年間サーミ大学(ノルウェー)に留学。
著書:『らくらく旅のフィンランド語』三修社)