山中典夫(北欧留学情報センター代表)

この夏や秋の休みに北欧へ旅行する人も多いと思います。北欧観光へ行く人は、そこにあるなにか特別なものを観に行くのではなく、「北欧そのもの」を見に行くことが目的になることが多いような気がします。もともと旅行は、意識するにせよしないにせよ、非日常を体験してリフレッシュすることが、目的になります。確かに、デンマークの長閑な様子や、ノルウェーの神々しいばかりのフィヨルドとそこに暮らす人々、森に恵まれたスウェーデン、たくさんの湖をまとったフィンランド。そんな北欧の風景に、身を置くだけで十分幸福感に浸れます。
個人的な意見ですが、それぞれの首都はそれぞれ魅力溢れる街ではあるのですが、北欧の旅ので最も魅力的な場所は、小さな町や田舎道だと思います。細野晴臣さん歌に、「ここがどこなのかどうでもいいことさ」(「恋は桃色」)というフレーズがあります。私は、北欧の道を歩くとなんとなくこの歌が口ついて出ます。日本とは違う、空の色を楽しみ、草や木の臭いを嗅ぎ、風に吹かれ、時には月の光を背に受けて歩いているだけで、それだけで、気持ちがいいのです。そして一緒に歩いてくれる恋人がいれば、もっといいです。食べ物を楽しんだり買い物をするのだけの旅行は、北欧には似合いません。あくまでものんびりと、疲れた心身をお風呂に浸すように、北欧旅行を楽しむのがいいです。強行スケジュールで疲れながら駆け足で回るのは、あまりにもったいないところです。
追記:北欧の小さな町のミュージアムに立ち寄るのもお奨めです。充実したものがとても多いのです。それからスーパーマーケットに入るのも面白いんですよね。

(本稿はOSV23号に掲載されたものです)