Päivää(パイヴァー)!こんにちは!
遅くなったけど、Hyvää uutta vuotta!(ヒュヴァー ウーッタ ヴオッタ)=「新年おめでとう!」2020年も皆さんにたくさんの幸せがありますように。
年が明けても探偵事務所は忙しいわ。今日もフィンランド語の謎を解明しなくちゃ。ハンナならどんな難題も解決できるんだから!・・・あら?新しい依頼人かしら。
🔎Case #10:『バターはデキる―2つの顔を持つことば』
ハンナが事務所のシャッターを開けると年老いた男性が立っていた。
ハンナ:おはようございます。こちらにご用でしょうか?
老人:おお、こちらは探偵事務所ですな。それも、フィンランド語の謎を解明するという。
ハンナ:はい、その通りです。
老人:フィンランド語は世界一難しいと言われているようじゃが、依頼人は毎日大勢いらっしゃるのかな?
ハンナ:ええ、最近は北欧ブームも手伝って、以前よりさらに増えています。ところで、その、あなたもご依頼にいらっしゃったのですか?
老人:ハンナ探偵、あなたはかなり優秀だという噂じゃが、こんなのはどうかな?
『キノコでキュウリをこすると痛い。バターはデキる。』
これはどういう意味かのう?すぐにわかれば、あなたは名探偵じゃ……。
ハンナ:はい?あれ、おじいさんが消えた!!いったい何?!
老人の声:今から1分以内で謎を解いてみなされ。はっはっはっ……。
ハンナ:うわ、声だけ聞こえる!とりあえず落ち着こう。フィンランド語の謎なのよね。トタ、トタ*1……キノコでキュウリを……バターはデキる……わかったわ!
謎を解くカギは「同音異義語」よ!
老人の声:ほう、詳しく説明してくださるかな?
ハンナ:キノコ、キュウリ、バター。この3つをフィンランド語に訳すと「キノコ」はsieni(シエニ)、「キュウリ」はkurkku(クルック)、「バター」はvoi(ヴォイ)です。しかし、これらは別の顔を持っています。それぞれに、いわゆる「同音異義語」、つまり「同じ発音で異なる意味を持つことば」が存在するんです。
老人の声:ふむ。
ハンナ:sieniは「キノコ」の他に「スポンジ」という意味があり、kurkkuは「キュウリ」の他に「のど」という意味があります。異なる意味のことばをそれぞれさっきの文に当てはめると、『スポンジでのどをこすると痛い』となり、意味が通じる文になります。
最後の『バターはデキる』ですが、voiは「バター」の他に「~できる(可能)」「おやまあ(感嘆詞)」という意味があります。そこで『バターはデキる』をフィンランド語にするとVoi voi.(ヴォイ ヴォイ)。これも「おやまあ」という意味の表現として成り立ちます。
フィンランド語の同音異義語を考えれば、『キノコでキュウリをこすると痛い。バターはデキる。』は『スポンジでのどをこすると痛い。おやまあ。』という文に読み替えることができます。いかがでしょうか?
老人、再び姿を現した。
老人:むむむ、予想外に早く解決されてしまったのう。もう少し難しい謎でも良かったかも知れん。頼もしい探偵になっているようで何よりじゃ。
ハンナ:あれ、さっきといでたちが違うように見えますが……赤い服に赤い帽子……えっ?おじいさん、もしかしてサンタクロース?!
老人:さあ、どうかの。短い時間じゃったが、楽しかったぞ、ハンナ。これからも悩める依頼人をたくさん救っておくれ。またいつか遊びに来ようかのう。ほっほっほっ……。
ハンナ:……う~……はっ?!え?私、寝てたの?おかしいな、さっきまでおじいさんと話してたのに、なんで机に突っ伏して……。
夢……だったの?年が明けたのに、サンタクロースが事務所に来る夢なんて、変なの……あ、そういえばあのおじいさん、小さい頃に亡くなったおじいちゃんに似てたかも……。
謎は……一応解決、かな?亡くなったおじいちゃんが私を心配して来てくれた、な~んてね。さて、休んでいる暇はないわ。次はどんな依頼が舞い込んでくるかしら?次回もお楽しみに!
*1 トタ(tota):日本語の「えーっと」に当たる語tuota(トゥオタ)のくだけた発音