Päivää(パイヴァー)!こんにちは!
pesäpallo(ペサパッロ)というフィンランド式野球があるの、知ってる?アメリカ式野球とはルールがだいぶ違っているの。ピッチャーはバッターのすぐそばで垂直にボールを放り投げて、それをバッターが打つ。走塁のコースやストライクカウントの方法も違う。こうなると、もう別のスポーツよね。
さて、今日もフィンランド語の謎を解明しなくちゃ。ハンナならどんな難題も解決できるんだから!
さて、4人目の依頼人は、カルチャースクールでフィンランド語を学ぼうとしている主婦のミチヨさんよ。
🔎Case # 4 :『 位置情報は正確に 』
ハンナ:こんにちは。今日はどんなご依頼かしら?
ミチヨ:最近 、 私の隣にフィンランド人の奥様を持つ方が引っ越してきたんです。とても
気さくな奥様なので、もっと親しくなりたくて、フィンランド語をちょっと勉強してみよ
うかなと思い立ちました 。
ハンナ:その方、日本語は話せないんですか?
ミチヨ:いいえ、上手なんですけど、 フィンランド語 を少し話したら喜んでくれるんじゃ
ないかと思って。 50 を過ぎて語学に手を出すのは無茶かも知れません けど 。
ハンナ:何かを始めるのに遅すぎるということはありませんよ 。
ミチヨ:そう 言っていただけるとうれしいわ 。 それで、カルチャースクールで勉強しよう
と思いましてね、一度体験レッスンを受けてみたんです 。 そうしたら、どうにも理解でき
ないことがあって・・・。これはその時のノートです。
ハンナ:2つとも「私は~にいます」という文ですね。
ミチヨ:そう、そこなんです。(1)のpostissa(ポスティッサ)は、posti(ポスティ)「郵便局」の変化形で、「郵便局に」という意味ですよね。だから最後のssaが「に」のような意味だと思ったんですけど、(2)のtori(トリ)「広場」には別の形、llaがついています。
ハンナ:なるほど。レッスンの時は何か言われましたか?
ミチヨ:文法より会話重視の短いレッスンだったので、詳しい説明はされませんでした。私もその時は気づかなくて質問もしなかったけれど、後で疑問がわいてきたんです。ssaとlla、同じ意味を表すのになぜ形が違うのかしら?ハンナさん、この謎が解けますか?
ハンナ:トタ、トタ*1・・・わかったわ!
謎を解くカギは「位置情報」よ!
ミチヨ:位置情報?郵便局や広場の情報が関係しているんですか?
ハンナ:はい。ミチヨさん、郵便局は当然建物があって、中に入ることができますよね。でも、広場というのは普通建物がなく、地面がメインというイメージでは?
ミチヨ:ええ、そうでしょうけど・・・。
ハンナ:フィンランド語というのは、「中」と「外」の区別を厳格にする言葉なんです。基本的に、postissaのssaは「中」に入ることができる場所につける形で、torillaのllaは「中」に入ることができない場所につける形なんですよ*2。
ミチヨ:まあ!そんな細かい区別があるの?
ハンナ:ええ。ですから、Olen postilla.(オレン ポスティッラ)とか、Olen torissa.(オレン トリッサ)と言うことは普通ないんです。ssaとllaだけでなく、場所を表わす語尾は全部で6種類あって、いずれも「中」か「外」かを区別しますね。
ミチヨ:そんな・・・覚えられません。
ハンナ:会話を重視したいなら、自分が使いそうなものから覚えていくのがいいですよ。お隣の奥様も教えてくださるでしょうし、間違えても誰も咎めたりしませんから気楽に、ね!
ミチヨ:それもそうね。ありがとうございます。問題が解決しただけでなく、楽しく勉強しようという気になれました!
ハンナ:語学には最低限の文法は必要ですが、大事なのは相手とのコミュニケーションですからね。
謎は解決!次はどんな依頼が舞い込んでくるかしら?次回もお楽しみに!
*1 トタ(tota):日本語の「えーっと」に当たる語tuota(トゥオタ)のくだけた発音
*2 このルールによらない使い方もありますが、今回は割愛します。
*3 「中へ」を意味する語尾は、場所を表す単語の音によって3種類あります。「母音」というのは、場所を表す単語の最後の母音のことです。